第四章 商号
(商号の選定)
第十一条  商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。
2  商人は、その商号の登記をすることができる。
(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)
第十二条  何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2  前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(過料)
第十三条  前条第一項の規定に違反した者は、百万円以下の過料に処する。
(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)
第十四条  自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
(商号の譲渡)
第十五条  商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。
2  前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(営業譲渡人の競業の禁止)
第十六条  営業を譲渡した商人(以下この章において「譲渡人」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、区。以下同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。
2  譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3  前二項の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない。
(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等)
第十七条  営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
2  前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。
3  譲受人が第一項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
4  第一項に規定する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。
(譲受人による債務の引受け)
第十八条  譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。
2  譲受人が前項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
(詐害営業譲渡に係る譲受人に対する債務の履行の請求)
第十八条の二  譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  譲受人が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡人が残存債権者を害することを知って営業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。営業の譲渡の効力が生じた日から二十年を経過したときも、同様とする。
3  譲渡人について破産手続開始の決定又は再生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受人に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。